玄関まで調理済みの食事を運ぶことで追い風に乗っている宅配事業
健康な人であれば老いも若きも、1日3食の食事を用意して食べることが食習慣となっています。一昔前であれば料理に必要な食材を用意し、朝、昼、晩に調理していたわけですが、経済成長が始まり、便利な生活をするための収入を得る必要が出てくると自宅外へ出て働く必要が高まってきたのです。それでも少し前までは専業主婦が自宅にいて3食の用意を担当し、家族の食事の世話をしていたわけですが、長引く景気低迷で働く者の収入が増えるどころか削減される状況が続いてきて、次第に主婦もアルバイトしなければ家計のバランスが取れなくなってきた結果、食材を購入し、調理する時間にも余裕がなくなってきたのです。年収2、3百万円程度で働く長時間労働の非正規雇用者の家庭を食事の観点から見れば自宅で調理する時間を削って収入を得るための労働時間に提供していることになっているわけです。こうして時間的に更に追い込まれて、一般家庭では帰宅途中でスーパーマーケットに立ち寄る時間も惜しくなると、費用がかかってもやむを得ず食材を宅配してもらったり、更に、調理済みの料理を宅配サービスで受け取る羽目に追い込まれているわけです。
このような労働環境の影響が大きく働いていると思うのですが、一方で、宅配業者のサービスが至れり尽くせりで顧客囲い込み競争しているため、妥当な価格に抑えられていて利用者には使い勝手の良いサービスとして食事の宅配事業は急成長しています。そのうえ、今夏の猛暑で消費者は健康な者でも買い物に出かける意欲を削がれてしまう程なので、食事の宅配サービス事業には一層の追い風が吹いているのです。元々、食事の宅配サービスは社会の高齢化が進む中で体力の低下した高齢者が増えて、買い物に出かけられない人をサポートするところがスタート台だったと思うのですが、急速に時間に余裕のない一般家庭にまで普及してきたわけです。宅配戸数の増加に伴ってコスト削減が可能になっているので、お弁当専門店やスーパーマーケットの商品と値段に大差がないのですが、店舗維持費のかからない部分を更に利用者に還元できるのではないかと思います。